140字BLお題ったーで書いたもの
140字オーバーしてるのはご愛嬌。
恋なんてしていない/暗いBL
はじめは、ただの無謀なガキだと思っていた。
持ち前の正義感で、何にでも首を突っ込んでは傷だらけになって、その度に「困ってる人を放ってはおけないだろ」なんて笑うものだから、お人好しもいい加減にしろと、呆れたこともある.
それでも放っておけなかったのは、時折覗かせる、遠くを見つめるような横顔が、眼差しの奥で燃える昏い炎が、頭に焼き付いて離れなかったから。手を放したら、どこかに行ってしまいそうで、気がつけば余計な世話ばかり焼いてしまった。
言い合いも、喧嘩も何度もした。殴り合ったこともある。それでも、そうやってぶつかってくるのは、俺だけだったから、アイツなりに心を許してくれているのだろうと、ほんの少し自惚れもした。
だからだろうか。アイツが一度だけ流した涙を見た時、胸が騒いだのは。
レッドのこんな姿を見るのは、俺だけであってほしい、なんて思ってしまったのは。
触れて、全部/なんちゃってBL
使い古された寝台の上で、身体を縮こめると、ふっ、と笑う声がした。
怖くはない、と言えば嘘になる。髪を優しく撫でる手も、熱のこもった琥珀色の瞳も、いつもの粗暴さは欠片もなくて、知らない誰かのようだったから。部屋の明かりを落とせば、夜の匂いが強くなった気がして、心臓が一層激しく脈を打つ。
それでも、拒むなんて選択肢は、最初からなかった。重ねた指先から伝わる温もりも、名前を呼ぶ心地のよい声も、汗と混じった紫煙の香りも、全部が愛おしい。ヒューズのことが好きで、求めてしまう気持ちが溢れて止まらない。今、ヒューズが欲しい。
触れてくれ、もっと深くまで。絡めた指に力を込め、そっと顔を寄せた。
だって好きなんだ/ほんわかしたBL
「おっさん、見ろって、アレ!」
通りがかった雑貨屋の前で、目を輝かせてレッドが立ち止まる。その視線の先には、手乗りサイズのペンギンのぬいぐるみが、ずらりと並んでいた。
「へぇ、意外。そういう趣味あったのか」
「小さい頃に藍子と一緒に集めててさ。みんな表情違うんだよ。懐かしいな」
これとか、ちょっとかわいい、とレッドが指を差した一体は、こちらを睨むような目つきで、ふてぶてしい顔をしてちょこんと座っていた。
「かわいいのかぁ、これ? 小憎らしいの間違いじゃねえの?」
「いいじゃん。好きなんだよ、こういうやつ。それにさ」
ペンギンとにらめっこをしていると、レッドが不意にぷっ、と吹き出す。
「なんか、おっさんに似てるじゃん、こいつ」
俺とペンギンを見比べながら、レッドは白い歯を見せ、目元を緩ませる。
……腑に落ちない。俺はもうちょっとスマートで、かっこいいっての。
そんな風に思いながらも、なぜか愛着が湧いてしまったペンギンを、レッドの手からつまみあげ、レジへと足を運んだ。
駄目じゃない、むしろ/ハチャメチャなBL
肺に溜まった紫煙を吐き出すと、傍らのレッドが目を側める。
「ああ、悪い、煙たいか」
「ん、別に」
小さく首を振ると、レッドは俺の手元に目線を移し、ふ、と薄く笑った。
……おかしい。いつものレッドであれば、隣で一服しようものなら、二、三言は文句を垂れてくるはずだ。普段と随分と違う態度に拍子抜けし、思わず首を捻る。
「お前、嫌なんじゃなかったっけ、コレ」
煙草の箱をトントンと指で叩いてみせると、レッドは顎に手を当て、うーんと唸る。
「まあ、確かに煙いんだけどさ。……ヒューズの匂いなんだよなぁって、思って」
ぽつりと呟くと、レッドはみるみる耳まで赤くしてそっぽを向いた。
「……へぇ」
頬が緩んでいくのを誤魔化すように、もう一度深く息を吸い込み、紫煙を思い切り吐き出した。
泣かしてやる/えろくないBL
「そうやってすぐカッとなって! いい年して我慢も知らないのかよ!」
殴られてズキズキと痛む頬を押さえて、腹の底から叫ぶと、ヒューズも負けじと大声で怒鳴り返してきた。
「お前がいちいち生意気なことするからだろ! 本ッ当に癇に障るガキだな!」
また始まった、という仲間達のため息が聞こえてくる。こんなくだらない喧嘩も、もう何度目かわからない。喧嘩の原因は、大体いつも同じだ。ちょっとしたことが気に食わなくて、売り言葉に買い言葉の言い合いが始まる。よせばいいのに、お互い意地を張りあって引き下がれなくなり、どちらともなく手が出るのが常だった。
別にヒューズのことが嫌いなわけじゃない。あれでいて面倒見のいいところもあるし、背中を預けた時には、誰よりも安心できる。ふとした瞬間に、何をしたいのか、何を考えているのか、言葉にしなくてもなんとなくわかることだってある。波長が合うというか、どこか似ているところもあるのだろう。
だからこそ、意地になる。生意気と言われたって、隣に立ちたい、負けたくない。
「……いつか絶対、泣かしてやる!」
同じタイミングで口を切ったのがまた気に入らなくて、もう一度拳を握った。
悪いけど君が好き/淡々としたBL
意中の人がいるのは知ってる。俺なんか、隣にいるのに相応しい相手じゃないのも、自分がよくわかっている。
それでも、たった一言に食って掛かってしまうのも、ふとした仕草を目で追うのも、どうしたってやめられない。
悪いけど、好きな気持ちは、自分でだって抑えられないから。